富山大学COC+関連地域課題解決科目講義レポート

授業科目名:人文学部「文化人類学実習3」

開講学期曜限:平成29年度前期・木曜3限・同4限

<立山町の課題解決に向けたフィールドワークを実施>

 

人文学部社会文化コース文化人類学分野に所属する3年生10人は8月23日から3日間、立山町に滞在し、それぞれが設定したテーマに沿って地域住民に聞き取り調査を行うなどのフィールドワークを行った。  調査に先立ち、同町役場の町長室を訪問。舟橋貴之町長から、町の観光資源や商店街の現状、地域が抱える問題等について話をうかがった。  学生たちは藤本武教授、野澤豊一准教授の指導の下、2年次から立山町について文献やインターネットの情報などをもとに事前調査を行い、それぞれが関心を抱いたテーマを設定。グループワークでは聞き取り調査の人選や文献の集め方などを検討しながら準備を進めてきた。「夏合宿」として同町里山暮らし体験施設「リフレしんせと」に滞在し、それぞれが会いたい人を訪ねたり、地元の図書館を利用したり、行政担当者に話を聞くなどしてテーマに沿ったデータを集めた。

 
「立山町インターカレッジコンペティション2017」に参加

学生が選んだテーマは、「五百石商店街の歩み」や、白装束の女性たちが白い布を敷いた橋を渡って極楽往生を願う「布橋灌頂会(ぬのばしかんじょうえ)」、「立山ブランド」に認定された商品の特徴、越中瀬戸焼の歴史、地元で継承されている獅子舞や民謡、浄瑠璃などとなっている。  人文学部社会文化コース文化人類学分野ではこれまでも富山県内を中心に北陸各地の市町村でフィールドワークを行っており、今回は立山町を対象としたことから、同町が地域活性化策を学生に呼び掛けてアイデアを募り、実証実験する「立山町インターカレッジコンペティション2017」に参加、応募校の一つとして実践している。同コンペティションには今回、富山大学を含め明治大、近畿大など8校が参加している。富山大学の学生は11月半ばに提案書を同町に提出、12月上旬に行政担当者らの前で発表するほか、来年3月には「地域社会の文化人類学的調査」シリーズ第27巻となる実習報告書を刊行し、配布する予定になっている。



 23日に行われた舟橋町長との面談では、学生が自己紹介し、町についての話を聞いた後、質疑応答などが行われた。舟橋町長は「高齢者の買い物難民問題など、立山町も少子高齢化に伴う問題を抱えている。町としては暮らしを守るサービスを考え、生活を守っていきたい。」などと話し、学生がそれぞれ関心を寄せるテーマについて「こんな人に会ってみれば」「このような催しを実施しているよ」などと助言した。
続いて商工観光課の小野勉課長が「商店街では空き店舗が目立っている。皆さんのアイデアをいただき、ストーリー性を持った取り組みを民間の力で継続していけるよう、行政は後押ししていきたい。」と述べた。同課観光交流係の坂井真理子主任は「立山町インターカレッジコンペティション2017」の今後の流れについて紹介、学生らを励ました。

“気になる人”に直接話を聞いて理解を深める

町役場を退出し、学生たちはそれぞれアポイントを入れていた取材対象者のもとへ向かった。越中瀬戸焼に関心を抱く福田響介さんは越中陶の里「陶農館」を訪問、この場所を拠点に活動する陶芸家で地元の作家集団である「かなくれ会」のメンバーの加藤聡明さんにインタビューした。
 福田さんは越中瀬戸焼がどのような工程で作られているのかや製法の特徴などについてたずね、ほかの産地と陶工を育成するシステムがどう違うか、現状と課題、加藤さんのこれまでの歩みなどについて聞いた。
 加藤さんは「越中瀬戸焼はアカマツで1,300度という高温の窯で焼く。火の流れによって偶然に生まれる変化が魅力であり、100個焼いて1個でも納得できるものが焼き上がればうれしい。」などと作陶の魅力と苦労を語った。
 これに対し福田さんは「立山町の産業を調べ、なんとなく越中瀬戸焼を選んだが、思った以上に歴史は長く、土や薪を地元に求めるなど立山町に重きを置いて活動しておられることが分かった。」と話した。
 藤本教授は「今は文献ばかりでなく、インターネットなどからある場所やテーマについて一般的な情報を簡単に集めることができる。しかし、現場に足を運んで地域に暮らす人たちの話に耳を傾けると、そこには知らない世界が膨大に広がっていることに気がつくはずだ。スマホで調べて事足れりとするのでなく、自ら訪れ直接話をきくことで初めて得られるものがあることを学生たちは学んでほしい。地域課題解決のヒントもきっとその中にある。」とフィールドワークの重要性を強調した。




追 記

12月10日に舟橋会館で成果発表会を開催する運びとなりました。ご興味のある方はご参加ください。参加無料です。



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